まちこ先生の旅からのらくがき

まちこ先生のドナウからのらくがき④
ヴコヴァル~ノービサード

元日系国際線客室乗務員。現在はマナー講師として全国で活躍中。

ドナウからのらくがき

voice_icon01 アマ・ウォーターウェイズ 2016年 8/20-29
  まちこ先生のドナウからのらくがき④ 8/23 ヴコヴァル~ノービサード


8月23日、目覚めると船はクロアチアのヴコヴァルに停泊していました。
ヴコヴァルの対岸はセルビアです。

午前中はヴコヴァルの町の見学。
この場所は戦争の恐ろしさと平和の尊さを教えてくれるところでした。

見学の前に、クロアチア紛争について少し。
クロアチアは「ユーゴスラヴィア」という連邦国家の一共和国でした。

ヴコヴァルではクロアチア人とセルビア人が仲睦まじく暮らしていました。
しかし、ユーゴ国内では1980年代から経済の悪化と同時に民族主義が高揚。

1991年、冷戦の終結と共にクロアチアがユーゴスラヴィアからの独立を宣言。
それを阻止するために、セルビア人を中心とする連邦軍が
ヴコヴァルを包囲し攻撃したのです。

このときに多くの人々が亡くなり、「隣人」が「敵」となったのです。
今でこそ戦争は終わりましたが、クロアチア人とセルビア人の「和解」は進んでいません。

バロック旧市街にはその紛争の傷跡が痛々しい。
クロアチア紛争のシンボルとなった「給水塔」。
物凄い砲撃、攻撃の傷跡に心が泣いてしまいます。

オフチャラ記念碑には、紛争で無くなった多くの若者の写真と遺品が祀られていました。
ヴコヴァル墓地も訪れました。
戦いで無くなった人々のお墓が無数に…。
しかし、ヴコヴァルの人々は凄い!!!

1997年に再び行政の機能を取り戻し亡命していた人々も帰還し。
今現在、一生懸命発展の努力をしているのです。

私はこの町ヴコヴァルを、ドナウのアメジスト(紛争)と
ドナウのペリドット(復興)の町と呼びたいと思いました。

さて、観光中に船はイロクに移動。私たちを乗せたバスはイロクに向かいます。
シップに戻るとフロントのAdamさんが、
笑顔で”Hallo again!” とチャーミングなウインクでお出迎え。
私も”Hi, Adam”と、たどたどしいウインクと笑顔でお返し。

この日のランチはレストランでフルコースを頂くことにしました。
テーブルのお友達はディックとマリー(アメリカ人)
美味しいコースを頂きながらお話しがはずみます。

ディックが How old do you think I am? (何歳に見える)と聞かれました。
65 66? と答えると72歳との事。
そこで私は、奥様は何歳あなたより何歳お若いの?
と聞きました(若くて美しい方ですから)。
すると She is 10 years older than I! (彼女は僕より10歳年上だよ)と。
つまり82歳!!! I wish I could be like you after 20 years.
(20年後の私は貴方のようであれるかしら?)と告げると、
もちろん旅は若さを保ちますよ、との答えが返ってきました。
20年後、私の目標はめざせMaryですね。

食事を頂いてるうちに船はノービサードに着きました。
まず迎えてくれたのは それはそれは大きなペトロヴァラディン要塞です。
(オスマントルコから街を守るために建設され、ドナウのジブラルタルとも
呼ばれていたこの要塞の地下には、深さ20m迷路のように広く長く続く
大規模な籠城戦、応戦の歴史跡がそのまま残されている)

食後はノービサードの街の徒歩観光(約2時間)です。
一言でいうなら、可愛らしくてエレガントなレディのような町でしょうか。

伝統と文化が豊かな都市。
人々はのんびりと穏やか。
ここはセルビアのアテネとも呼ばれていました。

歩きながら見えてくる建物の愛らしい事。
人々はアウトサイドのテーブルでカフェを楽しんでいます。
美しいマリア聖堂がある広場には気品が漂っていました。

何て素敵な街!!!!
パステルカラーの建物の美しいこの街を私はドナウのオパールと称えたいと思います。

ディナーの時間です。
飲み物はすべてフリードリンクですし、私は野菜だけのお食事が食べたい! と言えば
その希望も見事に叶えてくれるのです。
このシェフは凄い、そう思われませんか?

今日のテーブルはご年配のご婦人、お1人での席に加えて頂きました。
彼女はイギリス人。一人で旅行中との事。
推察するに90歳前後でしょうか。

彼女がおっしゃるには旅は年齢には関係ない。
Passion でするものなのだそうです。なるほど。
私も90歳で1人旅の世界旅行ができますでしょうか…。

色々と学んだステキな一日でした。
このような素晴らしい旅をさせて頂けることに心から感謝です。

食後はラウンジでSanderさんのピアノの音楽を楽しみました。
テネシーワルツのリクエストに応えてくれ、私も一緒に歌います。
ドナウ川のさざ波がハーモニーとして加わって。